新規顧客獲得およびリピーターの増加は、収益向上には不可欠な要素であり、多くの企業が常に直面している課題といえるのではないでしょうか。この課題に取り組む際は、顧客分析を行い、自社の顧客に対する理解を深め、そこから効果的なマーケティング戦略を展開する必要があります。顧客分析とは、集めた情報から顧客特性や傾向、行動パターンなどの要素を特定することで、マーケティングや顧客関係強化に役立てる手法です。今回は、顧客分析を行うメリットと具体的な手法、実施のポイントを解説します。
顧客分析とは
顧客分析は、企業や組織が顧客に関する情報を収集し、それを分析して顧客の特性や行動パターンを理解しようとするプロセスです。顧客分析によって得られる情報は、ビジネス戦略の開発、マーケティング戦略の策定、製品やサービスの改善、販売戦略の最適化などの、ビジネス上のさまざまな方針決定に役立ちます。
顧客分析の目的
顧客分析を行う主な目的は以下のとおりです。
・顧客の属性の理解
顧客の年齢、性別、地理的な場所、所得水準などの属性を把握する
・購買行動の把握
顧客が製品やサービスの購入に至る経過、購入目的などを理解する
・マーケティング戦略の最適化
ターゲット市場の選定、広告キャンペーンの調整、プロモーション戦略の最適化を行う
・顧客の満足度評価
顧客の意見やフィードバックから、顧客満足度を評価する
顧客分析の必要性
顧客分析は以下の点からマーケティング戦略に必要とされています。
・マーケットの理解
顧客の年齢、性別、地理的な分布、購買力などの情報を収集し、市場セグメンテーションを行うことで、ターゲット市場を選定しやすくなります。また、分析により市場の特性やトレンドを理解することで商品開発や事業戦略のための重要なデータを得ることができます。ドを理解することで商品開発や事業戦略のための重要なデータを得ることができます。
・ニーズの把握
顧客のニーズや要望を把握することは顧客の流出を防ぐことにも繋がります。顧客のフィードバックや購買履歴を分析することで、どの製品やサービスの需要が高く、どのような改善が必要かを特定できるため、需要予測や在庫管理にも役立てることが可能です。
・販売戦略の最適化
効果的な施策を割り出し、それに合わせた販売戦略を打ち立てることで、リソースの最適な配分に役立てることができます。
・顧客ロイヤルティの構築
収集したデータを分析して製品やサービスの品質向上に反映させれば、製品やサービスそのものの価値を高めることができます。さらに顧客サポートの改善に取り組むことで、長期的な顧客関係の構築と維持を可能とします。
顧客分析を行うメリット
顧客分析を行うことで、以下のメリットを得ることができます。
売上向上が期待できる
顧客分析に基づいて戦略を立てることで、ターゲット市場を的確に特定し、競争優位性を築くためのマーケティング戦略を最適化できます。これにより、リピート率の向上やアップセル、クロスセルの機会が増え、売上向上が期待できます。
コスト削減効果が期待できる
顧客分析を通じて、有効性の低い広告やプロモーション活動を排除し、リソースを効率的に活用することができます。コスト削減と収益の向上に貢献します。
市場トレンドの把握が容易になる
顧客の行動パターンを分析することで、新製品や次世代サービスの開発に関するデータを獲得できます。今後の市場トレンドや成長性を把握することは、事業計画にも役立ちます。
競争力の強化につながる
競合他社と比較するための情報を得ることで、市場での差別化ポイントを特定し、競合他社に対抗する策の立案につなげられます。
データを根拠に意思決定ができる
顧客分析によって、データを根拠とする意思決定が促進され、感情や直感に頼ることなく客観的な判断を下すことが可能になります。また、リスクを最小限に抑えつつ、合理性のある方針を立てることが可能です。
顧客分析の主な手法
顧客分析の主な手法を紹介します。
RFM分析(Recency, Frequency, Monetary Value分析)
RFM分析では以下の3つの指標から分析を行います。
・Recency(最新の購入日)
顧客が最後に購入した日付を評価します。最近の行動ほど高評価となり、リピーターの特定や顧客の活動状況を理解するのに役立ちます。
・Frequency(頻度)
一定期間内に顧客が購入した回数を評価します。頻繁に購入する顧客は優良顧客として分類され、顧客セグメンテーションの重要な位置を占める可能性が高いとされます。
・Monetary(金銭)
顧客が購入した商品やサービスの総額を評価します。高額な取引を行う顧客は、高価値な顧客とみなされます。
RFM分析による指標では、購入したのが最近で、購入頻度が多く、累計購入額が高いほど良い顧客となります。優良顧客の明確なレベル分けによって、効率的なマーケティング戦略を実施できます。
デシル分析
デシルとはラテン語で「10等分」を意味します。デシル分析では、顧客を購買額に基づいて10グループに分割(デシル)します。デシル10は最も低額の購買を行った顧客で、デシル1は最も高額の購買を行った顧客です。
収益性が高い顧客セグメントを形成し、戦略的なアクションを実行するために使用されます。
■CTB分析
Category(カテゴリ)、Taste(テイスト)、Brand(ブランド)の3つの指標で顧客をグループ化する手法です。「カテゴリ」は商品・サービスの種類、「テイスト」はデザインや形状・サイズ、「ブランド」は企業・商品のブランド、キャラクターなどがあります。
顧客がどのような志向性をもっているのかを判断し、区分けしたグループごとの傾向をつかむことで、それぞれの顧客に合ったアプローチを実施できます。
セグメンテーション分析
顧客の属性によって細かくカテゴリ分けし、グループを作成する手法です。年齢や性別、居住地、家族構成、ライフスタイルなどの属性や、ニーズ、購買履歴などによって分類することで、それぞれのグループにカスタマイズされたマーケティング戦略を展開できます。
行動トレンド分析
過去の行動パターン(購買行動)を評価し、将来の行動を予測する手法です。シーズンやイベントに関連する動き、また朝昼晩、曜日などによる変動も対象となります。
購買履歴以外に、Webサイトの閲覧履歴、ソーシャルメディアの活動なども情報に含まれます。行動トレンド分析は、ターゲット広告や個別の提案の最適化に役立ち、無駄な経費の削減に役立てることが可能です。
顧客分析のポイント
顧客分析を成功させるために考慮すべき重要なポイントは以下のとおりです。
事前準備と収集
・明確な目標設定
事前に、何を達成したいのかといった目標を明確化する必要があります。高額な購買が期待できる顧客に焦点を合わせたいときにはデシル分析を使うといったように、目標に合わせた分析手法を選択することが重要だからです。目標達成に必要なデータの特性を見極めて、適切な分析手法を選びます。
・顧客の定義づけ
顧客分析は、顧客を中心に据えた分析手法です。自社における顧客の明確な定義が欠けていると、正確な分析結果を得ることが難しくなります。定義があいまいでは各分析の結果がそろわないため、自社事業の内容に沿った定義を確立し、分析結果のブレをなくす必要があります。
性別、年齢、家族構成などの詳細情報を収集することで、顧客分析で得られるターゲット顧客像の精度が向上します。
・データの質と収集
データが不正確であったり偏りがあったりすると、分析結果の信頼性が損なわれ、マーケティングの方向性に誤りが生じる可能性があります。そのため、質の良いデータを収集する体制を確立しておかなければなりません。難しい場合は外部データの活用も視野に入れます。
・クレンジングと前処理
円滑な作業工程と正確な結果を出すためには、分析前にデータのクレンジング(不正確なデータの修正)と前処理(データの整形や欠損値の処理)を行うことが大切です。十分な下処理をせずに進めると、途中で不具合が発生したり、精度の低い結果となったりする場合もあります。
管理と活用
・データプライバシー保護と規制遵守
顧客データを扱う以上、プライバシーとセキュリティを保護するために適切な措置を講じ、関連する法律や規制に従う姿勢が重要です。顧客データの取り扱いに不備があると、企業の信頼性が損なわれるおそれがあります。
・セグメンテーションを吟味する
顧客を適切なセグメントに分けることは、ターゲット化と戦略のカスタマイズに不可欠です。セグメンテーションを吟味して行い、各顧客グループに対する有効性の高いアプローチを検討します。
顧客分析で売上向上につながる戦略の土台づくりを
優れた顧客分析は、新規顧客やリピーターの獲得をはじめ、製品・サービスの改善、マーケティング戦略全体にも貢献します。分析手法は多数ありますが、いずれを採用するにしても、重要なのは基礎となる顧客情報の質です。
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※ 2023年3月末現在
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2023年11月執筆
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