DX(デジタルトランスフォーメーション)化やビジネスにデータを活用する取り組みは加速しています。しかしながらその現状は、大量に取得したデータや今まで蓄積してきたデータの精査、システムごとの仕様や組織ごとの運用ルールの齟齬など課題も多く、データ活用の効果を実感している企業はまだまだ少数派のようです。企業の経営戦略、製品やサービスの企画・開発、マーケティングなど、データを活用して施策を検討し意思決定をする場合、ベースとなるマスターデータの品質の高さが重要です。
今回は、売上の拡大や、業務効率化によるコスト削減、タイミングを逃さない正確な意思決定など、あらゆる事業活動にデータを活かすために欠かせないマスターデータの整備についてご紹介します。
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1.企業・国家レベルで高まるマスターデータ管理の重要性
マスターデータとその整備
マスターデータとは、日常的な業務運営で活用されるデータベースで、「顧客マスタ」や「商品マスタ」「会計マスタ」など、基礎的な集積データのことです。社内システム等を活用し、データ処理する際にベースとなるデータで、マスターデータの厳密な管理は、企業にとって必要不可欠であり、情報システム関係者にとっては恒久的なテーマです。
たとえば顧客マスタには、各社固有の顧客番号やIDなどに紐づいて、顧客名や電話番号、住所などが整理されていますが、変更や更新など常に最新の状態を保つための取り組みや、同一の顧客が重複して存在しないよう管理しなければなりません。
マスターデータの管理とは、営業やマーケティング戦略に活用されることはもちろん、売上の管理、商品発注や店舗・従業員の情報など、事業を推進する上で必要となるデータを整えることで、ビジネスの高度化を目指すには、必須の取り組みです。
国をあげて取り組んでいるデータの整備
データを整備・連携して活用する取り組みは、企業だけではなく国や公的機関でも強化されています。とくに、コロナ禍で露呈した脆弱なデータ活用基盤(データの整備、標準化、取り扱いルール等)については、デジタル化の必要性が唱えられており、国主導によるデータ戦略(※1)が進められています。
※1 データ戦略の策定について(内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 令和2年10月23日)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/data_strategy_tf/dai1/siryou1.pdf
その最たるものが、個人や法人、地理空間情報など社会全体の基盤となるデータ「ベース・レジストリ」の整備で、データの標準化やルールの明確化、正確性や最新性などの品質確保に向けて準備が進められています。今まで公的機関等で登録してきた情報は台帳などが相当する場合が多く、社会活動の基礎データを各省庁それぞれで管理・運用していました。
しかし、データ戦略のコンセプトとして、データ活用のベースラインを構築しデータをつなげることで価値を高めるとしており、分野ごとの連携を容易にする取り組みとあわせて、「ワンスオンリー」「ベース・レジストリ」「オープンデータ」についてデータの標準化を軸につないでいく取り組みが進められています。
ベース・レジストリについては、デジタル社会における必須の環境であり、国の競争力を左右し、最新のデジタルテクノロジーを活用する基盤としている点など、企業のマスターデータ整備に通じることも多く、直接的な業務効率化に効果があることはもちろん、経済的なインパクトも大きいと考えられる点も共通しています。
企業における顧客マスタ管理の重要性
社内で蓄積されたデータ活用については、BI(ビジネスインテリジェンス)やDWH(データウェアハウス)といったツールの活用も進みつつあり、事業運営の意思決定など重要な役割を担うことが増えてきましたが、マスターデータの管理が不十分な場合、分析データの精度にも大きくかかわることから、各企業はマスターデータのマネジメントへの取り組みを強化しています。
中でも顧客マスタについては、SFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)等を活用して既存顧客や見込み客を管理することも増え、さまざまな業務処理に用いられるため、非常に重要です。顧客情報の整備不良は、無駄な稼働を増やすことや販売機会の損失に直結します。
2.マスターデータ整備の基本とは
マスターデータ整備が必要となる理由
マスターデータの整備が必要であることはわかったけれど、マスターデータを整備するには、時間もコストも多くかかるため、自社で手がけることがなかなか難しいのも事実です。
時間やコストがかかる理由のひとつは、データの入手方法や入手時期が不明であることが挙げられます。多くの場合、企業は自社で収集した情報を自社で加工して使おうとします。そのなかには、所有者から使用許諾を得ていない情報などが混入している可能性も考えられるでしょう。
また、いつ入手したか明らかでなく更新もされていないため、いざ活用した時にはデータが古く、本社や工場が移転していたり、代表者が交代していたということは少なくないのではないでしょうか。
令和3年度版の情報通信白書(※2 102ページ)では、「データの収集・管理に係るコストの増大(データのフォーマット等が共通化されていない、データ品質の確保等)」を課題としている企業が37.8%、「データの所有権の帰属が自社ではない又は不明な場合があること」を課題としている企業が24.2%もあるのが実情です。
※2 総務省 令和3年度版情報通信白書 102ページ
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/n1200000.pdf
顧客マスターデータを整備する主な手法
このような課題への対策はいくつかありますが、ここでは主な方法についてご紹介します。
ひとつは、データクレンジングシステムの構築です。ここまで読み進めていただければおわかりの通り、マスターデータは定期的に整備することが不可欠です。そのため、定期的かつ自動的に整備するようシステム構築してデータをきれいにする(=クレンジングする)方法があります。
また、マスターデータの品質を保つためにコストと時間をとられ、肝心なデータ分析に手が回らないなど本末転倒の事態は避けたいところです。例えば、クレンジング時に発生する不明データ(マッチ・アンマッチの定義に合致しないデータ)への対処など、データの解明をしつつ、最適化を行えるデータ整備のプロフェッショナルにアウトソーシングすることが考えられます。
ただ、注意しておきたいのは、データを自動的に、あるいは外部に委託して定期的に整備するにしても、クレンジングに使用するデータの品質が重要です。データが古かった、あるいは間違っていた、不正に入手していたのでは、意味がありません。
不可欠なのはクレンジングに必要な優良データ
マスターデータの重要性とデータ整備の重要性を述べてきました。では、クレンジングに必要な優良データとはどのようなデータでしょうか。
まずは、自社で保有するデータと突合するためのマッチングキーを保持していること。そして、自社が保有するデータの性質に見合ったデータ量や網羅性、正確性を高める鮮度、そして信頼性など、各々の条件に合致したデータです。
現在、さまざまなデータが流通しており、データ活用の目的にあわせて選択の幅も広がっていますが、コンプライアンスへの対応など、データを取り扱う上で重要となる点もカバーしているデータを利用しなければなりません。
(2022年1月執筆)
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