交通データが都市計画やマーケティングなどのさまざまな分野で活用されるようになりました。GPS機能のついた携帯電話の普及によりデータを入手しやすくなったことや、パソコンの処理能力が向上して膨大なデータを処理しやすくなったことが背景にあると考えられます。しかし、交通データの詳細や入手方法は、あまり知られていないのが現状です。
都市計画や渋滞解消、マーケティングなどの分野では、その地域に関する交通データや交通行動、土地利用の変化に関するデータが必要になります。
ここでは、交通データの収集を検討している方向けに、交通データとは何か、どんな種類があるか、どのように入手できるのかを説明します。
NTTタウンページの「タウンページデータベース」はビッグデータ時代以前からの、特定エリアにおける交通行動と遍歴がわかるデータを蓄積しています。このデータをもとに「街の変遷」に関する研究を進めた事例もありますので、こちらもあわせてお読みください。
交通データとは
交通データとは、人やモノの移動に関連するさまざまなデータの総称です。電車・バスなどの公共交通機関の利用者数を測定した交通量、移動手段や移動目的などの交通行動、道路や信号などの交通インフラ、交通関連の環境データや経済データなどがあります。具体的には、次のようなものが該当します。
- 公共交通機関の路線図や時刻表、料金表
- 道路地図
- 各地点の交通量や速度
- 物資流動調査
- 交通機関を利用する人のパーソントリップ(Person Trip)調査
なぜ交通データが重要なのか
交通データは、都市機能の維持向上、交通渋滞や交通事故などの社会的課題の解決には欠かせない重要な情報です。交通データを正しく分析し活用することで、さまざまな分野に役立てることができます。例えば、交通インフラの最適な整備や渋滞緩和策の立案などです。
交通に関する計画を立案する際も、交通データを基本にする必要があります。データを用いずに計画を立案しようとすると、主観的な要素が増え、計画の客観性を保つことが難しいでしょう。
交通データの粒度
交通データにはさまざまな粒度(細かさ・粗さ)があります。交通データを利用するときには、それぞれの粒度を把握し、用途に合ったものを選ばなければなりません。
粒度が低い順に並べると、次のようになります。
全国レベル
大がかりな世論調査や白書などの公的なデータが多いです。収集・統計に時間がかかるため、リアルタイムデータはありません。交通分野で使えるデータも少ないでしょう。
都道府県レベル
各都道府県が発行する調査・統計書などの公的なデータです。地域旅客流動調査やパーソントリップ調査など、長距離交通の実態に関するデータがあります。
市町村レベル
各市町村が発行する調査・統計などの交通データです。市町村単位の通勤通学の移動動向に関するデータが取得できます。公開する内容や範囲は市町村ごとに異なります。
町字レベル、メッシュレベル(1km~500mレベル)
国勢調査小地域集計、経済センサス、携帯基地局移動データなどのデータがあります。携帯基地局移動データでは、リアルタイムのデータを取得することが可能です。
1人・1台レベル
携帯基地局移動データ、Wi-Fi、ETC、交通系ICカードログなどを利用した、個人の移動に関するデータです。個別のデータを大量に蓄積した「ビッグデータ」として扱われます。近年、都市計画やマーケティングなどさまざまな分野で利用されています。
参考:交通に関わる統計データには何がありますか?|公共交通トリセツ
世論調査や白書のような粒度の低い(粗い)データは収集・統計に時間がかかるため、リアルタイムデータの取得は困難です。しかし、オープンデータとなっていることが多いため、基本的に無料で取得できます。
一方で、粒度の高い(細かい)データは、リアルタイムデータを取得することが可能です。しかし、ほとんどの場合、取得コストがかかります。また個人情報保護の観点から、データを匿名化するといった処理が必要です。
交通データの種類
交通データには次のような種類があります。
自治体(各都道府県、市町村)の統計書
各自治体の公式サイトから取得可能です。無料で利用できるオープンデータがほとんどです。
国および各省庁の白書、国勢調査、統計調査、国土地理院の地図、国土数値情報、世論調査結果など行政機関が保有・取得するデータです。調査・統計の結果もあります。ほとんどが各省庁の公式サイトから取得可能な無料のオープンデータで、ダウンロードや加工も可能です。
パーソントリップ調査や大都市交通センサスなどの交通関連調査
都市圏などで行われている調査で、基本的に公式サイトから取得可能です。一部、調査機関への申請が必要なものもあります。
民間企業が収集・蓄積した位置情報データ
民間企業がさまざまな方法で収集した位置情報データも、交通データとして扱われます。例えば、交通系ICカード、経路検索のログデータ、携帯電話の基地局データ、携帯電話のGPSデータ、Wi-Fi、カーナビゲーションシステムなど得られるプローブデータ、OD調査(パーソントリップ調査や物資流動調査)などがあります。
民間企業では、大量のデータを蓄積して個人情報や企業情報が特定されないように匿名化処理を行ったうえで、ユーザーの目的に合わせて利用できるようにしたサービスを提供しています。
交通データの取得方法
交通データを収集するには、次のような方法があります。
公開されているデータを収集する
公的機関のオープンデータを収集する方法です。代表的なのが、国土交通省の「国土交通データプラットフォーム」です。このサイトは、「条件から検索」「地図から検索」の2つに大きく分かれており、さまざまな角度からのデータ取得が可能です。
「条件から検索」では、キーワードやテーマから必要なデータを検索できます。また、データカタログから資料の種類を指定しての検索も可能です。
「地図から検索」では、地図で地点を指定し、その地点に関するデータを、複数の資料から横断して検索できます。
自社でデータを取得する
自社でデータを収集・蓄積する方法です。自社独自の切り口で収集ができますが、実用に十分な量のデータを収集するには、長い時間や膨大なコストが必要となるでしょう。特に交通データを収集するには、相応の設備投資や人員が必要です。収集したデータの品質管理も、自社だけ行うのが困難な場合が多いです。
データ収集の専門家でない限り、自社で十分な量・品質のデータを収集・蓄積することは難しいでしょう。
外部の専門家から購入する
ビッグデータを収集・蓄積している企業が提供する、目的に合わせて抽出・分析できるデータベースサービスを利用する方法です。相応の費用はかかりますが、広い範囲から収集し、個人情報や機密情報などの問題を解決した、信頼性の高いデータを利用できます。
これにより、効率的で精度の高いデータ収集・分析が可能です。また、データを取得・利用するときには、専門家の知見やノウハウを得ることもできます。
企業データや過去の地域データならTPDBがおすすめ
目的によっては、交通データ以外のさまざまなデータを組み合わせて分析することが必要です。そこで、おすすめなのが、NTTタウンページの「タウンページデータベース」です。タウンページ(職業別電話帳)に掲載される企業情報をデータベース化したもので、企業の住所・電話番号といった基本情報、法人番号や資本金などの項目を利用目的に応じて絞り込めます。また、出所が明確で信頼できる高品質のデータベースであり、データ総数は約800万件※と広い範囲を網羅しています。さらにデータベースは毎月1回更新されており、鮮度の高い情報を提供可能です。
また、過去のデータを利用した比較対象も可能です。例えば、当該地域での土地利用や存在している企業の変化などを知ることができるデータは、街の変遷に関する研究を行う大学の研究室でも利用されています。
東北大学大学院情報科学研究科では、街や人の交通行動が時代とともにどう変化してきたのかを知るため、「タウンページデータベース」を利用しました。
「タウンページデータベース」があれば、過去のデータでもデジタルデータで利用することが可能です。さらに種類や地域で分類された、使いやすい形式のデータがそろっているため、研究にも利用しやすいのです。
同科では、「タウンページデータベース」を利用することで、街の「質的な変化」を明らかにする研究が進んでいます。詳しくは導入事例をご覧ください。
※2023年3月現在
交通データの活用が効率的な計画立案につながる
交通データとは、人やモノの移動に関連する多様なデータの総称で、都市機能の維持向上や社会的課題の解決に重要な情報です。全国から個人レベルまで粒度はさまざまで、自治体や国の統計、民間企業の位置情報データなど種類も多岐にわたります。
データの取得には、公開データの利用、自社収集、外部専門家からの購入という方法があり、目的に応じて適切な方法を選ぶ必要があります。ただし、交通データは専門性が高いため、まずは専門家に相談してみましょう。
参考:
交通データの分析・可視化基盤に関する取り組み|国土交通省 国土技術政策総合研究所
パーソントリップ調査とは|近畿地方整備局
2024年6月執筆
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