社会の変化を受け、不動産マーケティングにおいてもデジタル化が急速に進んでいます。従来のアナログ手法のみでは顧客ニーズをとらえきれないだけでなく、効果的な訴求の機会も失いかねません。不動産事業に効果的とされるマーケティング手法は多数ありますが、デジタル化に伴い、特にデータの活用が重要なポイントとなってきました。本記事では、不動産のマーケティングについてその概要や目的、デジタル化のポイントを解説します。
不動産のマーケティングとは
初めに不動産のマーケティングの概要と、最近の変化について解説します。
マーケティングと営業活動の関連性
不動産マーケティングの主な目的は、以下のとおりです。
- 集客(新規見込み客、優良顧客の獲得)
- 顧客との関係強化、維持
- 潜在層への認知拡大
- 優良物件の獲得
営業活動とは、個々の顧客と直接向き合い商品を提案するもので、顧客を個別に理解する必要があります。一方でマーケティングでは、顧客全体の傾向を把握します。さらに、必要であれば業界や市場全体など広い視野での分析を行い、潜在顧客の特定やニーズ把握をしたうえで、効果的な施策を実施します。
どちらも売り上げにつなげるための活動ではありますが、活動領域は異なります。マーケティング施策に沿った営業活動を行うことで、営業活動の精度向上や効率化が実現します。
変化する不動産マーケティング
商品やサービスを効率良く販売するためには、ニーズのある層に対して自社商品の価値を正しく伝えながら、的確にアプローチする必要があります。
しかし現代社会では、少子高齢化、生活スタイルおよび価値観の多様化、インターネットの普及など、不動産業界を取り巻く環境が大きく変化しており、過去のようにマスメディア(新聞・テレビなど)を使った方式が通用しなくなってきています。
ニーズを確実にとらえ、効率的なアプローチを実施するためには、消費者、競合、市場の調査をもとにして社会と顧客を理解することが重要です。そのためにも、時代の流れにマッチしたマーケティングの手法が求められています。
急速なデジタル化が進む不動産マーケティング
2019年、国土交通省により、「不動産ビジョン2030」が公表されました。わが国の豊かな国民生活、経済成長等を支える重要な基幹産業としての、不動産業界の持続的な発展を確保するための重要な指針です。このなかでは、不動産業のあるべき理想的な将来像の実現に向け、デジタル化、AI、IoT等新技術の有効活用が重要な役割を担うことが示されています。
すでに多くの企業では、不動産マーケティングにおけるデジタル化を加速させています。例えばオウンドメディアによるコンテンツ施策により、潜在的な顧客にアプローチし、確実な成果を挙げている例も見られます。
また、SNSの活用により地域密着型の不動産会社としてのイメージ強化を図る企業や、VR・AR技術の活用により物件内覧の新たな体験提供を展開している企業もあります。
このように、すでに不動産業界は、さまざまなデジタル手法を用いて、より効果的、効率的なマーケティングが行われるようになってきています。
今後も不動産業界のデジタル化はさらに進んでいくと考えられており、新たなマーケティング手法の登場が期待されます。
不動産のマーケティング手法
不動産のマーケティングには、従来型のアナログ的手法とオンラインの活用をはじめとしたデジタル的手法がありますが、前述したような生活スタイル・価値観の多様化、インターネットの普及などにより、デジタル的マーケティング手法が大きな注目を集めています。
以下では、代表的なデジタル的マーケティング手法を紹介します。
■Web広告
Web広告とは、インターネット上に広告を出稿するマーケティング手法です。Web広告は、対象者の属性や行動履歴などのデータをもとに、ターゲットを絞り込んで広告を配信することができるのが特徴です。効果測定がしやすく、広告の効果を把握しながら改善につなげることができるため、マス広告に比べると費用を抑えることができます。
Web広告には、検索エンジンの検索結果ページに表示されるリスティング広告、Webサイトやアプリなどに表示されるディスプレイ広告、視覚的に訴求力のある動画広告、SNSのタイムラインやフィードに表示されるSNS広告などがあります。
■オウンドメディア展開
自社のポータルや専用サイト、ブログ等による情報発信です。顧客が知りたい有益な情報を掲載することで、顧客との信頼関係を構築可能です。優良コンテンツを構築することにより、顧客は不動産にまつわる有益な情報が得られ、商品やサービスへの関心を高めます。
コンテンツ掲載のほか、自社サイト上でホワイトペーパーや資料のダウンロードができるようにしたり、ウェビナーを開催したりすると、さらに効果向上が期待できます。
■不動産ポータルサイト
不動産ポータルサイトとは、不動産の物件情報や不動産会社の紹介を掲載するWebサイトです。不動産を探す見込み客は、不動産ポータルサイトを活用して物件情報の収集や比較検討を行うのが一般的になってきています。
不動産ポータルサイトには多くの見込み客が訪れるため、自社の物件情報を幅広く見込み客に認知してもらうことが可能です。また、物件のエリア、価格、間取り、設備など、さまざまな条件で検索することができ、見込み客のニーズにマッチした物件情報を届けられます。
■SNS
SNSとは、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの略語で、今はさまざまな種類が存在します。SNSの特徴は、ユーザ同士のコミュニケーションが活発で、拡散効果が高い点にあります。
不動産業界においては、物件情報の発信、暮らしに関する情報の発信、キャンペーンやイベントの告知などがSNSとの親和性が高い情報でしょう。ユーザには顧客・見込み客・潜在層などが含まれ、多様な層とのコミュニケーションにより、認知度の拡大や消費者との関係性構築が期待できます。
■ジオターゲティング広告
ジオターゲティング広告とは、スマートフォンやモバイルWi-Fiなどから取得した位置情報をもとに、対象者の行動や趣味嗜好(しこう)に沿ったWeb広告を配信できるサービスです。条件を設定し、サービスや商材の見込み顧客を絞り込んで表示させることで高い効果を挙げられます。
位置情報をもとに行動や興味に合わせて必要とされる情報を配信する、Web広告の新たな手法として注目されています。
不動産マーケティングを成功に導くポイント
不動産マーケティングを成功に導くために、押さえておきたいポイントを解説します。
ターゲット設定を明確にする
インターネット上にはすでに膨大な情報があふれているため、ターゲットに合わせて情報を提示しないと埋もれてしまう恐れがあります。マーケティングのすべての施策においては、焦点となるターゲット層の明確化が重要です。
ターゲット層を定めることで、どのような物件を、どのような方法でアプローチするべきかといった方向性が定まります。
ターゲット層を設定する際に、留意したい主な項目は以下のとおりです。
- 年齢
- 性別
- 家族構成
- 生活エリア・行動エリア
- 収入
- 趣味・ライフスタイル
データを活用した顧客理解
ターゲット層の絞り込みができたところで、対象のニーズや課題を理解することが重要です。ターゲットを理解するほど、顧客に響く訴求ポイントが検討しやすくなります。
このとき、ターゲットを理解するのに「経験」や「勘」に頼ると誤った判断につながる懸念があるので、客観的なデータを活用することが大切です。
そこで、人流データによる位置情報・世代・性別などのデータを活用することで、ターゲット層に届くマーケティング施策が可能となります。例えば、ガソリンスタンドによく行く層に対して駐車場がある物件の広告を発信するなど、相手の生活環境に合わせた情報提供ができます。
また、情報精度はすべてのマーケティング施策の重要な要素です。豊富、かつ網羅的で出どころの明確な信頼性の高いデータを使うことも、重要なポイントです。
マーケティング施策の継続
マーケティング施策は定期的に見直し、改善する必要があります。
施策の目的と目標を明確にした後は、目標値に近づいているか随時効果測定を行い、ギャップを把握します。そして、ギャップを埋めるためには課題を見いだし、改善を続けながら成果を追求します。
継続的にマーケティングを実施することで精度が向上し、市場のニーズに柔軟に対応できる企業に成長していけるでしょう。
外部の専門パートナーに依頼する
競争が激化する不動産業界では、継続的・戦略的なマーケティング実施が重要です。定期的なターゲット層のニーズや、市場の動向調査に基づくマーケティング施策のアップデートが求められます。またマーケティング施策の実施においては、複数の施策の組合わせにより有効性を高めることも大切です。
有効性の高いマーケティングを自社のみで行うためには、専門部署の設置とマーケティングに精通した人材確保が必要となります。専門人材の知見を活用することで、成果を確実に得ることができるでしょう。
しかし、専門人材の確保は簡単ではありません。そういった場合は、信頼できる外部の専門パートナーに依頼する方法があります。
以下は、総数約800万件(※)の鮮度の高いデータをもとに、ビジネスに応じたターゲットリストを作成し、活用方法もご提案するNTTタウンページデータベースの活用事例です。
※2023年3月末現在
NTTタウンページの不動産マーケティング活用例
■タウンページデータベースと位置情報を組合わせたジオターゲティングの活用例
タウンページデータベースにスマートフォンアプリの位置情報を組合わせることによって、居住地・年齢・趣向などのセグメント分けが容易になります。例えば富裕層向け不動産の販売であれば、高級住宅エリアに居住しており、比較的金額の高いスポーツジムやスーパーマーケットを利用しているユーザをターゲティングし、ターゲットに対しダイレクトに広告を配信できます。
■タウンページデータベースの活用例
景気の低迷により分譲マンション市場が不振のなか、高級マンション販売を行うC社も売り上げ拡大の必要性に迫られていました。しかし、広告やDM(ダイレクトメール)を通じた一般向けの販促活動では成果が上がらず、特に高額物件の成約が難しい状況が続きます。
そこで、解決策としたのがタウンページデータベースの活用です。信頼性の高いデータベースから高所得と見込まれる業種(医者、弁護士、会計士など)を選定し、DMを送付する手法を採用したことで、着実な成果へとつながっています。
エリアターゲティングとデジタル化で
効果的な不動産マーケティングを
インターネットが日常にある現代社会において、不動産のマーケティングも改革が迫られています。すでにデジタル化により成果を上げる企業が増えるなか、自社の戦略としていち早くデジタル化に着手していく必要があります。
さらにデジタル化と同時に、エリアターゲティングの要素も付加していきましょう。ビジネスにおいて、いかにターゲットを理解し、ターゲットへ向けた訴求を行えるかが、事業成功の大きなポイントとなります。データを活用した顧客理解においては、世代・性別などのデータにエリア情報も加味することでターゲットの解像度が高まります。
不動産のマーケティングにお悩みの際には、NTTタウンページのタウンページデータベースと位置情報を掛け合わせたジオターゲティング広告の活用がおすすめです。マーケティングにおけるデータの活用から、ターゲット属性に合わせた効果的な広告の配信まで多様なサポートを提供しています。
2024年1月執筆
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