コロナ禍で復活の兆し?
菓子店(洋菓子)都道府県別登録件数ランキング
老若男女問わず、多くの人に愛される洋菓子。お土産や贈答用はもちろん、日常生活において気軽に洋菓子を購入して食べる習慣がある人も多いはず。コンビニエンスストアや駅の売店などでも簡単に手に入るので、より身近な食べ物になっています。
ほとんどの洋菓子のルーツはヨーロッパにあります。日本に初めて持ち込まれたのは16世紀で、当時は南蛮菓子と呼ばれていました。ポルトガル船が種子島に漂着し、鉄砲やキリスト教の伝来とともに、日本の洋菓子の先駆けとなる“カステラ・ビスケット・ボーロ・金平糖”などのお菓子が日本に伝わり始めたと言われています。そして文明開化以降に、関東(東京・横浜)や関西(大阪・神戸)において日本人の手で洋菓子が作られ始められたようです。日本の伝統的な「和菓子」に対し、小麦粉などを主材料とした菓子を「洋菓子」と呼び、区別していました。
現代では多くの洋菓子店が街中で見られるようになりましたが、その一方でコンビニエンスストアでも安くておいしい洋菓子が手に入るように。
果たして、ここ10年程度の洋菓子店の登録件数はどうなっているのでしょうか?また、コロナ禍の影響度合いは・・・?
今回は、全国の菓子店(洋菓子)の登録件数から業界の状況を考察し、どの地域に洋菓子店が多いのかを都道府県別に調査しました。
コロナウイルスの影響?減少に歯止め傾向
はじめに、2013年から2022年までの全国の菓子店(洋菓子)の登録件数の推移データをご紹介します。
2013年から2019年にかけての菓子店(洋菓子)の登録件数を見てみると、年々右肩下がりに減少しているのがわかります。具体的には年平均385件ずつ減少をしており、ピークとなる2019年は502件の減少が記録されています。
菓子店(洋菓子)の数が減少している理由としては、コンビニスイーツやショッピングモールに出店しているスイーツ店による影響があります。コンビニスイーツは安価かつ品揃えが年々豊富になっており、SNSで話題になったりテレビで特集されるなど、多くの人の目に止まることで消費者の足はコンビニスイーツへ向きます。気軽に立ち寄れるコンビニエンスストアで美味しいスイーツが購入できる環境なので、わざわざ洋菓子店へ足を延ばす必要がなくなったことが消費者離れの一つの理由ではないかと考えられます。
また、スマートフォンの登場でインターネット購入が当たり前になり、通信販売でのスイーツ販売も活発化しました。スイーツへのニーズは年々上昇していましたが、街の洋菓子店はその波に乗れずにいました。また、2019年は洋菓子の原料となる小麦粉やバターの価格高騰や消費税増税などが重なりますが、街の洋菓子店にはそれらが大きな経済負担となり、廃業が相次ぐようになりました。その上、2020年に入るとコロナウイルスの世界的な感染拡大により、多くの企業が経済的な打撃を受けることになります。
しかし、洋菓子店の場合、登録件数こそ減少はしているものの、コロナ禍前に比べるとその勢いは鈍化しています。2020年の減少数は443件、2021年の減少数は488件、2022年の減少数は309件にとどまりました。コロナ禍における洋菓子店の減少が落ち着いている理由は、自宅で贅沢なスイーツを楽しみたいというニーズが大きくなったことです。コロナウイルスまん延防止策として、人が多く集まり密になるような場所を避けるよう国や自治体から何度も要請がありました。コンビニエンスストアやショッピングモールはまさに密になりやすい場所として避けられるようになり、消費者が街の洋菓子店に足を運ぶようになります。また、外出できない代わりに自宅でもっと良いものを食べようと、プチ贅沢を楽しむ人が増え、街の洋菓子店で販売されている少し高いけど美味しいスイーツの購買が増加しました。
もちろん、コンビニエンスストアやショッピングモールも消費者の足を取り戻すために、健康志向や環境志向の商品の開発など、大手ならではの商品開発をおこない熾烈な競争は続くことでしょう。客足が街の洋菓子店に向いている間に、来てくれたお客様の心を引き止めるための対策ができるかが、今後の洋菓子店の動向を左右することになります。
「洋菓子」好きなのは意外な県だった!?
続いて、2020年から2022年にかけての都道府県別の菓子店(洋菓子)の登録件数と10万人あたりの菓子店(洋菓子)の登録件数の調査結果をご紹介します。
人口10万人あたりの菓子店(洋菓子)の登録件数の多い地域は、1位が富山県、2位が長崎県、3位が福井県となりました。
1位の富山県は10万人あたりの件数が15.27件で、2位と大差をつけて3年連続で1位に輝いています。2位の長崎県は2020年・2021年と3位に甘んじていましたが、2022年は逆転して2位に浮上しています。3位は福井県ですが、福井県の10万人あたりの件数は13.82件で2位の長崎県は13.87件で非常に僅差ですので、翌年以降再逆転の可能性が十分あります。
3位以外のTOP10の状況ですが、ほとんどの県が3年連続で登録件数の減少がみられる中、沖縄県は唯一菓子店(洋菓子)が増加しています。2021年は169件でしたが、2022年は172件と3件増加しており、順位も10位から9位に浮上しています。
1位:富山県
富山県は10万人あたりの登録件数が15.27件で、3年連続1位を獲得しました。富山県は海の幸や山の幸が豊富で新鮮な食材に恵まれた地域で、近年若者の移住者も増えています。冠婚葬祭を始め家族や人付き合いを大切にし、そこにお金を使うという県民性があると言われており、手土産や贈答品としての需要が高いのかもしれません。
2位:長崎県
長崎県は10万人あたりの登録件数が13.87件で、昨年の3位から一つ順位を上げました。海外への窓口だった歴史からも洋菓子店が多いのは納得の結果。ただし、2021年に2件減少、2022年に9件減少と、菓子店(洋菓子)自体の登録件数は大きく減少しています。
3位:福井県
福井県は10万人あたりの登録件数が13.82件で、2位の順位を守ることはできませんでした。登録件数自体も2年で13件減少しています。石川県も5位にランクインしている所を見ると、北陸の人は甘いもの好きが多いのかもしれません。
カヌレブームの再来!「カヌレ」ってどんなお菓子?
今流行している洋菓子は、フランス発祥の「カヌレ」です。おしゃれで可愛らしい見た目に人気が集まり、専門店も増加傾向にあります。1990年代に一度カヌレのブームが起きていましたが、今回二度目のブームとして人気が再燃しています。第一次のブームではクラシックなプレーンタイプが人気でしたが、現在のブームではデコレーションされ写真映えするカヌレが人気となっています。街の洋菓子店にはこうしたブームの取り入れも重要な宣伝方法の一つとなるでしょう。
まとめ
減少が止まらない街の洋菓子店ですが、コロナ禍をきっかけにやや減少幅が小さくなりつつあります。密の回避からコンビニエンスストアやショッピングモールから流れてきた消費者の心を掴むため、流行しているスイーツの取り扱いや他店と差別化した独自性のアピールが大切になります。また、全国どこへでも商品を届けられるように通信販売事業を開始したり、力を入れることも必要かもしれません。
タウンページデータベースではさまざまな業界の統計データを用意しています。宣伝企画や効果測定におけるデータ活用をご検討の際は、ぜひタウンページデータベースにご相談ください。
2022年12月執筆
【調査概要】
都道府県別 人口約10万人に対する「菓子店(洋菓子)」の登録件数分布及び年別の推移を掲載しています。
■対象期間と抽出方法:2020年・2021年・2022年の各6月時点で、タウンページデータベースの業種分類「菓子店(洋菓子)」に登録されている件数を集計し算出。
※1人当たりの登録件数は、小数点以下数桁になるため10万人換算をしています。
データベースにご関心やお悩みがございましたら、
ぜひお気軽にお問い合わせください。