ファミリーレストラン激戦区はどこ?その理由を考察!
おいしい料理と家族や仲間とのかけがえのない時間が楽しめる、私たちにとって馴染み深いファミリーレストラン。日本のどの都道府県にもありますが、その件数は地域によってばらつきがあります。今回は、2021年度版ファミリーレストランの件数と激戦区のランキングを作成し、そのデータから日本のファミリーレストラン業界の現状について考察します。
ファミリーレストランは年々減少傾向に!?
はじめに、日本全国のファミリーレストランの件数の推移についてみていきましょう。ファミリーレストランの都道府県分布と登録件数推移は、2014年に2005年から2014年のデータをまとめましたが、今回は最新版として2019年から2021年のデータを追加したデータをご紹介します。
2014年の記事:「人口10万人当たりの分布No.1は山梨県!」 より抜粋
全国のファミリーレストランの件数は2005年が9,811件。それ以降、徐々に下降し、2010年には8,891件に、2020年には7,773件となりました。およそ15年間で2,000件以上のファミリーレストランが減少していることになります。
これにはさまざまな要因が考えられます。
ひとつ目に挙げられるのが、「少子高齢化による人口減少」です。2005年の日本の総人口はおよそ1億2,776万人。2010年には1億2,805万人と増加したものの、2015年は1億2,709万人、2021年には1億2,563万人と、減少の一途をたどっています。特にファミリーレストランの顧客層である30代に関しては2005年が1,856万人だったのに対し、2018年は1,463万人と、15年足らずで2割ほど減少。顧客となる総数が縮小しているため、大きな流れとして必然的にファミリーレストランの需要も減り、件数も減少傾向に推移したことが考えられます。
ふたつ目の要因は、「不景気」です。2008年のリーマンショック以降、長期に渡るデフレ傾向で消費者の消費意欲はどうしても低い状況が続いてきました。2020年以降は、新型コロナウイルス感染症の影響でさらに外食需要が低下しています。
また、「食の多様化」もファミリーレストラン離れの一因と考えられます。飲食店にはファミリーレストランだけでなく、カフェやファーストフード店、居酒屋、ラーメン店、カレー店など、さまざまな業態・ジャンルのお店があり、競争が激化。ファミリーレストランの売上は年々減少傾向にありますが、対照的にカフェやファーストフードなどは増加傾向にあるのです。
このように、ファミリーレストランが減少している背景には、さまざまな要因が絡み合っていると考えられます。
ファミリーレストランの件数ランキング!上位は首都圏と大都市圏が独占
次にファミリーレストランの件数データを都道府県別にグラフでまとめました。
全国平均は152件です。1位は東京都で996件、2位は神奈川県で669件、3位は埼玉県で637件と、首都圏に集中しています。大阪府は5位、愛知県は6位、福岡県は10位と、人口が多い大都市圏が軒並み10位以内にランクインするという結果になりました。
一方で人口が少ない地域はファミリーレストランの件数も少ない傾向にあります。やはり、人口が多ければ多いほど、それだけ顧客数も多く、外食需要も高いため、ファミリーレストランの件数と人口は関連性が高いことが考えられます。
ただし、例外もあります。たとえば、沖縄県の人口は約145万人で全国31位ですが、ファミリーレストランの件数は30件で全国45位です。一方で人口あたりの居酒屋の店舗数は全国1位であり、ファミリーレストランに行くよりも居酒屋でお酒を飲みながら食事をするという文化が根づいていることがわかります。また、本州とは距離があり、チェーン店が進出しにくいという事情もあるのかもしれません。
ファミリーレストラン激戦区ランキング!1位は山梨県
単純に都道府県別のファミリーレストランの件数をグラフでみると、なんとなく予想どおりという印象があるかもしれません。やはり人口が多いエリアほど、件数は多い傾向になります。しかし、10万人あたりのファミリーレストランの件数をみてみると様相は変わり、意外な県が1位になっています。
なんと2021年の1位は山梨県で、10万人あたりのファミリーレストラン件数が10.25件という結果となりました。2位は千葉県で、3位は埼玉県です。一方で件数ランキングでは上位だった東京都は8位、神奈川県は6位という逆転現象がみられました。この要因について考察していきます。
【山梨県】
全国で唯一10万人あたり10件を超えている地域です。山梨県は甲州街道や中央道が通り、首都圏と長野や東海地方、北陸地方を行き来する人たちが通る交通の要衝です。また、自動車保有率が高いクルマ社会でもあることや、周囲を山に囲まれていることから人が密集しやすい地理的条件もあってファミリーレストランの需要も高く、激戦区になっていると考えられます。
【千葉県】
特に西側は東京のベッドタウンという側面が強く、ファミリー層が多く住んでいます。国道6号線、14号線、16号線など主要国道をはじめ、首都高速湾岸線や京葉道路などの有料道路や高速道路も通っており、道路網が発達しています。自動車保有率も高いことから、ファミリーレストランの出店に適しているエリアと言えます。
【埼玉県】
千葉県と同様に東京都と隣接する埼玉県は東京のベッドタウンとして発展してきた側面もあり、都心に通勤するファミリー層が多く住んでいるエリアです。国道4号線や16号線といった主要国道のほか、東京外環自動車道や常磐自動車道、東北自動車道、関越自動車道などの道路網も整備されています。さらに自動車保有率が首都圏一都三県では最も高く、千葉県と同様にファミリーレストランが出店するのに適した土地柄と言えます。
10万人あたりのファミリーレストランの件数は大都市よりも近郊都市のほうが多い傾向に
このように、ファミリーレストランの総件数だけをみれば都心のほうが多いですが、10万人あたりの件数ではむしろ都市近郊のエリアのほうが多い傾向が浮き彫りとなりました。
前述のとおり、10万人あたりのファミリーレストランの件数は1位山梨県、2位千葉県、3位埼玉県と続き、以降も茨城県、栃木県、神奈川県という東京近郊エリアがランクイン。総件数で1位だった東京都は7位となります。
実はほかの大都市圏でも同様の傾向がみられます。関西圏では、奈良県が18位(10万人あたり5.54件)、滋賀県が21位(10万人あたり5.23件)で、大阪府は26位(10万人あたり4.83件)でした。
また名古屋都市圏では、三重県が20位(10万人あたり5.37件)、岐阜県が34位(10万人あたり4.35件)で、名古屋市のある愛知県は37位(10万人あたり4.27件)です。
もともとファミリーレストランはクルマ社会であるアメリカの郊外型コーヒーショップを参考にして日本で生み出されたビジネスモデルです。自動車で来店するファミリー層をターゲットにしているため、幹線道路沿いにあることや、車で入りやすいこと、広い駐車場を確保できる立地であることなどが求められます。土地が確保しにくく、電車で移動することの多い都心よりも、ある程度の土地が確保できてターゲットとなるファミリー層が多く住んでいること、さらに自動車で移動する人の割合が高い大都市近郊エリアのほうが人口あたりのファミリーレストランの件数が多いのも納得できますね。
まとめ
人口減や不景気、新型コロナウイルス感染拡大の煽りなどの影響を受けて減少傾向にあるファミリーレストランですが、それでも私たちにとっては食事や大切な家族・仲間との時間を楽しめる、魅力ある場所であることには変わりありません。
ファミリーレストランの件数自体は人口が多い首都圏や大都市圏に集中していますが、10万人あたりの件数でみてみると大都市よりもむしろその近郊のほうが多い傾向があることが今回のリサーチでわかりました。
このように、データを多角的な視点で検証することで、また違った事実がみえてきます。データ分析からは、地域ごとのマーケットや文化、地理的な要因なども推測することができ、新規出店計画を立てる際などに大いに有用な情報となり得るのです。
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コラム筆者:遠藤 実希子
(2022年3月執筆)
【調査概要】
都道府県別 人口約10万人に対する「レストラン」の登録件数分布及び年別の推移を掲載します。
■対象期間と抽出方法:2019年・2020年・2021年の各4月時点で、タウンページデータベースの業種分類「レストラン」に登録されている件数を集計し算出。
※1人当たりの登録件数は、小数点以下数桁になるため10万人換算をしています。
※掲載情報は2021年11月時点のものです。
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