リレーションシップマーケティングは顧客との長期的な関係を築くための手法で、売上の向上や安定をもたらします。そのため、現代のビジネスにおいて重要であるといえます。
ただリレーションシップマーケティングを始めようにも、そもそもどんなものかも分からない、リレーションシップマーケティングの中にもいくつか方法があるのは知っているが、どれが自社に向いているのか分からない、という方も多いでしょう。
この記事では、さまざまな背景から注目されるリレーションシップマーケティングの基本やメリット、具体的な手法や事例などを解説します。
リレーションシップマーケティングとは
市場環境が変化し、顧客と長期的な関係を築けなければ、売上が低下したり、不安定になったりするようになりました。そのため、顧客との関係を築くマーケティング手法として、リレーションシップマーケティングが必要とされています。
この章ではリレーションシップ・マーケティングの基礎知識と注目されるに至った背景を詳しく解説します。
顧客との関係を構築・維持するためのマーケティング手法
リレーションシップマーケティングは、企業と顧客との長期的な関係の構築・維持を目的としたマーケティング手法です。1980年代にレナード・ベリーによって提唱された考え方であり、一時的な取引や売上を追求するのではなく、顧客との信頼関係の深化を重視しています。
リレーションシップマーケティングの例としては、ECサイトで商品を何度か購入後、そのサイトにアクセスすると「おすすめ商品」が表示されていたり、消耗品を購入して数カ月後に「そろそろ追加購入が必要ではないですか?」とメールが送付されたりすることが挙げられます。
リレーションシップマーケティングが注目される背景
市場環境の変化により、顧客に選び続けてもらうためのマーケティング手法が求められたため、リレーションシップマーケティングが注目されています。主な市場環境の変化は3つです。
- 消費者の情報収集力の向上
- サブスクリプションモデルの普及
- 市場の成熟による新規顧客獲得の難化
消費者の情報収集力の向上によって、独自に情報を調査して商品の購入を決定することが増加したため、購入前に関係性を構築して選んでもらう必要があります。また、サブスクリプションモデルを扱っている場合は、顧客に継続的にサービスを利用してもらうための関係性構築が欠かせません。さらに、成熟した市場では新規顧客の獲得が難しくなるため、既存の顧客との関係を強化する取り組みが重要となっています。
リレーションシップマーケティングの
実施で得られるメリット
この章では、リレーションシップマーケティングを実施する3つのメリットとそれぞれがもたらす効果について詳しく解説します。
リピート率の向上
リレーションシップマーケティングによって、常に顧客の高い満足度をキープして「ロイヤルカスタマー化」できれば、他社商品やサービスへの乗り換えリスクが軽減し、必然的にリピート率が向上します。サブスクリプションモデルを扱っているのであれば解約率の低減が見込めるでしょう。
一方で、リレーションシップマーケティングを実施しなければ、顧客との関係性が構築できません。その結果、別にほかの企業の製品でよいか、と乗り換えが頻発することでリピート率・契約継続率が低下し、売上の不安定さにつながります。
※ロイヤルカスタマー:商材や企業に対して愛着心や信頼をもってくれている顧客のこと
顧客単価の向上
リレーションシップマーケティングを実施すると、商品やサービスのファンになる顧客の獲得につながります。その顧客が、一度の購買で複数購入したり、年に何度も購入したりしてくれるようになることで顧客単価の増加がもたらされます。
一方で、リレーションシップマーケティングを実施しなければ、顧客とコミュニケーションがとれずにニーズを深く理解することが難しくなります。その結果、顧客が望んでいない商品やサービスを展開してしまう危険性があります。そして、既存顧客を失ってしまうことで、顧客単価が全体的に低いままとなってしまい、売上が一定のところで伸び悩んでしまうでしょう。
生涯顧客価値=LTV(Life Time Value)の向上
リレーションシップマーケティングによる既存顧客の維持・拡大はLTV向上の大きな要因となります。良好な関係を長期にわたり構築できている既存顧客からのリピート購入には顧客獲得単価がかからないため、利益を最大化できるためです。
「リピート率の向上」「顧客単価の向上」で説明した通り、リレーションシップマーケティングによって、顧客との関係性を構築できないとリピート率と顧客単価が低下します。その結果、必然的にLTVも低くなってしまうでしょう。そうなると新規顧客を獲得する必要があり、より大きなコストがかかってしまいます。
リレーションシップマーケティングの具体的な手法
リレーションシップマーケティングの具体的な手法は大きく3つです。それぞれの手法の概要は以下の通りです。
データベースマーケティング | アカウントベースドマーケティング(ABM) | SNSのようなWebツールを用いたアプローチ | |
概要 | 顧客の情報を収集・分析し、その興味・嗜好に合わせて情報を提供し、購買行動を促進するアプローチを行う | ロイヤルカスタマーをメインターゲットとし、それぞれに合った手法を用いてアプローチを行う | 新しい商品やサービスのPRをする場としてSNSを活用してアプローチを行う |
また、それぞれの手法のメリット・デメリット・向いている企業の特徴もまとめています。自社に合った方法を探す際にお役立てください。なお、この章ではそれぞれの手法の概要・メリット・デメリット・向いている企業の特徴について詳しく解説します。
データベースマーケティング | アカウントベースドマーケティング(ABM) | SNSのようなWebツールを用いたアプローチ | |
メリット | ・効率よく幅広い層に最適なアプローチが可能・機会損失の減少が望める | ・売上につながる顧客に集中してリソースを割ける・戦略やアプローチ方法を策定しやすい | ・ブランディングを行いやすい・幅広い層に認知してもらえる |
デメリット | ・効率よく幅広い層に最適なアプローチが可能・機会損失の減少が望める | ・アップセル、クロスセルできない場合は効果がない・企業全体の理解を得る必要があり、導入までに時間がかかる | ・継続的に更新する必要がある・炎上のようなトラブルに発展する可能性がある |
導入に向いている企業の特徴 | ・顧客データの蓄積がある・小売業やサブスクなど継続的な関係が求められる商材を扱っている | ・アップセル、クロスセルできる商材がある・優良顧客が大企業のような大口顧客である | ・ターゲット層にSNS利用者が多い・低予算で実施したい |
1.データベースマーケティング
データベースマーケティングとは、顧客情報を収集・管理・分析し、顧客の興味・嗜好にマッチするような情報を配信・提案するアプローチによって購買につなげる手法です。顧客情報は、主に顧客の属性情報、アンケート回答、購買履歴などが該当します。
データベースマーケティングのメリット・デメリットは以下のとおりです。
▼データベースマーケティングのメリット・デメリット
メリット
・定期的なアプローチによって顧客の流出防止が見込める
・顧客情報をもとにニーズに沿ったアプローチが可能
デメリット
・膨大な顧客データの収集・分析に時間がかかる
・正確な分析のために最新の情報へ更新しなければならず、常にデータの収集・蓄積が必要
データベースマーケティングはその名の通り、データが重要な役割を果たします。そのため、ゼロから始めるにも情報の蓄積や分析ができる体制であることは必須です。また、繰り返し購入できる商品・サービスでなくては、顧客と関係を築いたとしても売上にはつながりにくいでしょう。
2.アカウントベースドマーケティング(ABM)
アカウントベースドマーケティング(ABM)とは、主にBtoBの営業や販促で用いられる手法です。ロイヤルカスタマーをメインターゲットとして、それぞれのニーズを満たせるような手法を用いてアプローチします。
アカウントベースドマーケティングのメリット・デメリットは以下です。
▼アカウントベースドマーケティングのメリット・デメリット
メリット
・高いLTVが見込める顧客へのアプローチにのみ時間をかけられる
・ターゲットが完全に絞られているため戦略やアプローチ方法の検討が容易
デメリット
・アップセル・クロスセルができる商品・サービスを元々抱えている企業でないと売上につながらない
・マーケや営業の連携が必須で、導入には多くの人の理解を得る必要があり、導入までに時間がかかる
アカウントベースドマーケティングは、高いLTVが見込める顧客へのアプローチにのみに集中した戦略やアプローチ方法を実施できます。一方、アップセル・クロスセルができる商品・サービスでなければ、関係性を築き上げても売上につなげる手立てがありません。また、全社的な取り組みが必要になることで導入までに時間がかかってしまう側面もあります。
メリット・デメリットを踏まえた上でアカウントベースドマーケティングに向いている企業と向いていない企業の特徴をまとめています。
▼アカウントベースドマーケティングの導入に向いている企業・不向きな企業
アカウントベースドマーケティングの導入に向いている企業の特徴
・大企業のような大口顧客を抱えている
・売上につながるようなアップセル、クロスセルできる商品・サービスがある
アカウントベースドマーケティングの導入に不向きな企業の特徴
・BtoCのような大量の顧客を対象としている
・自社の商品やサービスのラインナップが乏しく、アップセル・クロスセルが難しい
アカウントベースドマーケティングを実施するには、大企業のような大口顧客がいること、売上につながるようなアップセル・クロスセルできる商品・サービスがあることの2点を満たしている必要があります。逆にBtoCのように大量の顧客を相手にしていたり、商品やサービスのラインナップが少なかったりする場合は不向きです。
3.SNSを用いたアプローチ
SNSを用いたアプローチとは、新しい商品やサービスをPRする場としてSNSを活用する手法です。コンスタントに情報発信をすることでファン層の獲得や拡散によるプロモーションを行います。
SNSを用いたアプローチのメリット・デメリットは以下です。
▼SNSを用いたアプローチのメリット・デメリット
メリット
・自社でブランディングを行うことで、特定のイメージを与えながらの認知につなげられる
・SNSを用いることで今まで見てもらえなかった層にも見てもらえる可能性がある
デメリット
・ほかの業務と並行して継続的に更新する必要があり、手間がかかる
・SNSの投稿に関するルールを明確にしておかなければ炎上につながるリスクがある
SNSを用いたアプローチは、自社が自由に企業のイメージを与えながら認知してもらえることと普段見ていない層への認知拡大につなげられます。一方で、集客には定期的な更新が必須であり、ほかの業務と並行して継続的に実施しなければなりません。また、SNSの投稿に関するルールを明確にしておかなければ炎上につながり企業のイメージダウンにつながる危険もあります。
メリット・デメリットを踏まえた上でSNSを用いたアプローチに向いている企業と向いていない企業の特徴をまとめています。
▼SNSを用いたアプローチの導入に向いている企業・不向きな企業
SNSを用いたアプローチの導入に向いている企業の特徴
・ターゲット層にSNS利用者が多い商品やサービスを扱っている
・リレーションシップマーケティングを手軽に低予算で実施したい
SNSを用いたアプローチの導入に不向きな企業の特徴
・購入層が高齢の商品・サービスを扱っている
・効果に即効性を求めている
商品やサービスをターゲットとしている層がSNSを頻繁に利用しているのであれば高い宣伝効果が見込めるでしょう。また、とりあえず手軽にプロモーションしたい企業にとっては低予算で実施できるSNSは向いています。
ただし、商品やサービスのメインとなる購入層が高齢者のように普段SNSを使う人が少なければ、SNSによる効果は低いでしょう。また、SNSマーケティングは時間をかけて実施する必要があるため、すぐ売上につなげたいという場合は不向きです。
4.リレーションシップマーケティングの事例
リレーションシップマーケティングにおけるそれぞれの方法を実際に活用した企業の事例をまとめています。
・データベースマーケティングの事例
書店やレンタルショップなどのプラットフォーム事業を中心に展開している企業では、会員情報をマーケティングに活用しています。
数千万人の会員の基本情報(性別・年齢など)や生活属性(年収や結婚歴など)、購買履歴や好みをデータベースとして蓄積しており、その情報をもとにマーケティング活動を実施しています。
・アカウントベースドマーケティング(ABM)の事例
大手インターネットサービス企業は、データの「精度・鮮度・粒度」の重要性に焦点を当て、顧客管理と洗い出しを徹底的に行いました。その結果、「重点優良顧客群」を洗い出し、その関連企業や未取引の支店、さらには潜在顧客へのアプローチも成功させています。
実際その企業がアカウントベースドマーケティングを導入したことで、BtoBの顧客化率が7倍に引き上がりました。
・SNS用いたアプローチの事例
小売店チェーンなどではSNSマーケティングを巧みに活用し、顧客との強固な関係を築いています。X(旧:Twitter)では新商品やキャンペーンのリアルタイム情報を発信しています。
さらに、インフルエンサーとのコラボやInstagramのビジュアルコンテンツ、LINEでの独自キャンペーンを通じて、顧客の関心を引きつけ、購買意欲を刺激しています。このようなSNS戦略により、ブランドの認知度向上と顧客ロイヤリティの強化の実現を叶えることも可能となります。
まとめ
本記事では、リレーションシップマーケティングの基本、重要視されている背景、メリット、具体的な手法、そして事例について詳しく解説しました。
既存顧客を維持しつつ単価やリピート回数を向上させることがビジネスにおいて非常に重要であり、リレーションシップマーケティングは、そのために顧客との長期的な関係を築くことを目的としています。
今回紹介した具体的な手法や事例を参考に、自社のビジネスモデルやターゲットに合わせたリレーションシップマーケティングの取り組みを進めることで、収益を最大化すると同時に長期的に安定した利益の確保が可能です。
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