社会や市場の急激な変化、嗜好の多様化など企業を取り巻く環境が厳しさを増すなか、重要度を増しているのがデータ活用です。膨大なデータをもとに精度の高い経営戦略を策定する事が、企業の継続的な成長を手助けします。しかし実際には、データ活用に課題を感じている企業も少なくありません。
ここでは、データ活用に関する課題と課題解決のポイントについて解説します。
データ活用の現状と課題
総務省公表の「令和2年版情報通信白書」によると、データ活用については5年前に比べ、POSやeコマースによる販売記録、MtoMデータ(Machine-to-Machine)を含む自動取得データの活用が大きく進展していることが示されています。こうした様子から、データ分析による企業経営の高度化が進められていることがうかがわれます。
その一方で、以下のような課題もあります。
- データ活用状況は企業規模により格差がある
企業規模が大きいほうが活用の割合は高く、中小企業では活用が進んでいない - データの分析体制が整っていない
データの収集、現状分析は進められているが、データ分析を行う担当者が決まっていない企業も多い
参考:総務省「令和2年版情報通信白書(PDF)」
上記の2つの課題の原因として、以下の3点が挙げられます。
- データ活用の難易度が高い :データ活用の推進は容易ではなく、必ずしも成功するとは限らない
- 費用対効果の予測が困難 :相応のコストがかかるうえ、費用対効果の予測が困難
- 専門人材が必要 :そもそも社内でのデータ活用にかかわる人材が不足している、もしくはいない
企業としてはデータ活用の重要性や必要性を理解していたとしても、上記のような原因により、組織でデータ活用を推進しようという動きが鈍くなりがちです。そのような状況では、データを活用した経営戦略によって本来得られるはずの「価値創造」「競争力強化」などは実現できません。
次章以降では、データ活用がうまくいかない具体的な理由を確認したうえで、課題解決へのポイントを解説します。
なぜデータ活用がうまくいかないのか
前述のとおり、データ活用の推進には課題があります。なぜデータ活用がうまくいかないのか、より具体的に解説します。
保有するデータ量が不足している
経営戦略や事業推進にデータを役立てるためには、分析に必要な量のデータを保有していることが前提となりますが、そもそもデータ量が十分ではないケースが見られます。例えば、営業活動に際し自社で保有しているデータが少ないため、営業地域内の企業情報を網羅できず十分な営業活動ができないケースが挙げられます。
データの品質に問題がある
データ量を十分に保有していても、品質に問題がある場合はデータ活用に不向きです。例えば、顧客データが不正確である、重複している、古い、あるいは不完全であるといったケースの場合、このような顧客データをビジネスに活用してしまうと、顧客とのコミュニケーションで問題が生じるかもしれません。そのためデータのクレンジングや正確性の確保が行われていない場合は、企業活動における活用は難しいでしょう。
データの統合がされていない
企業活動では日々膨大な情報を集積しますが、さまざまなデータソースを統合して一元化しなければならない点もデータ活用を阻む要因です。顧客情報、売上データ、マーケティングデータなどが分散していると、一貫性のないデータとなり、全体像の把握が困難となります。結果、企業活動や経営戦略への有効活用が難しくなるでしょう。
データの適切な分析・活用ができていない
豊富なデータを保有していても、それを適切に分析し、活用するスキルやプロセスが整っていない場合、企業活動への活用は困難です。データ活用には、データから必要な情報を抽出し、分析した仮説や考察をもとに立てた戦略を個別の施策に落とし込んでいくことが求められます。そのための知見やツールが不足していると、いかに豊富なデータを保有していても十分な価値を生み出せません。
データセキュリティとプライバシーが十分に担保されていない
データセキュリティや個人情報のプライバシーに関する懸念がある場合、データの共有や活用が制限され、効果の高いデータ活用につながりません。セキュリティ対策や法令遵守など、幅広い取り組みが求められます。
社内の協力体制が整っていない
データ活用では組織全体でのデータ収集が必要ですが、全社的な連携が行われない場合、有効なデータが得られません。例えば、営業部門だけでデータ活用を推進しようとしても、カスタマーサポートや技術部門の理解と協力を得られなければ、より精度の高い顧客情報や製品情報は得づらいでしょう。また、社内の協力体制が不十分な場合、データ活用することへの抵抗感が生じる恐れもあります。
データ活用の課題を解決するためのポイント
これらの課題を解決するために、組織がとるべき行動を説明します。
社内全体の体制整備
社内全体へデータ活用の重要性が認知されるためには、データ活用を推進する体制を整えることが重要です。データ活用を社内に浸透させる方法として、以下のような施策があります。
・経営層のコミットメント
経営層自らが企業経営におけるデータ活用の重要性を説きます。また、必要に応じた資金の振り分けも行います。
・データ活用を促進する旗振り役の任命
全社的にデータ活用が進むよう各部門のマネジメント層を旗振り役として任命します。部門ごとのマネジメント層が積極的にプロジェクトをリードすることによって、社内全体でデータ活用が推進されるようになるでしょう。
・データ活用推進部門の創設
データ活用の推進を行う部門を創設し、スモールスタートから着実にデータ活用プロジェクトを実行していきます。成功実績を重ねて、実績をもとにデータ活用の有益性を社内に浸透させます。
現場の作業基盤を整備
データ活用を進めるためには、実際に業務でデータを扱う現場の環境整備が必要です。
・データ活用の目的・目標を明確にする
データ活用が具体的にどのような成果をもたらすのか、何を得たいのかといった目的・目標を明確にすることで、データ活用の方向性や取り組みの優先順位を決めることができます。
・データの収集・蓄積体制を整える
目的を達成するために必要となるデータを定義し、データの収集・蓄積のフローを構築します。データの分析・活用を容易にするためには、データ形式の統一も必要です。
・データ分析ツールの導入
データ分析ツールを導入することで、データから有益な情報を効率的に抽出することができます。また、データ分析のスキル・ノウハウ不足を補完することもできます。ただし、ツール導入自体が目的とならないように注意が必要です。
外部パートナーの活用
上記に挙げた2つのポイントを押さえることは有効ですが、自社のみで実施する場合は負担が大きくなる場合があります。そこで外部の専門家の協力を仰ぎデータ活用を推進しましょう。外部パートナーの活用により、以下のようなメリットが得られます。
- 自社に不足しているデータ活用の専門知識やスキルを得られる
- データ収集やデータ整備などの準備段階を短縮でき、よりスピーディーに成果を上げられる
- 社内リソースを圧迫せず、効率的にデータ活用ができる
ただし、やみくもに外部パートナーへ依頼しても、高い効果は得られません。自社でデータ活用を推進する体制を整えつつ外部の手を借りることで、自社に必要なサポートを受けられ、高い効果につながるのです。
データ活用の成功事例
データ活用での成功事例を紹介します。
顧客データの徹底活用とデータ駆動型の営業戦略|大手電機メーカー
ある大手電機メーカーでは、データを軸とする社内横断的なマーケティングを実施しています。
蓄積された顧客データの統合によって、ライフステージの各プロセスに合わせた提案が可能となり、利益拡大に寄与しています。
他にも、競合やインサイトの分析、事業の意思決定においてデータの参照が行われています。
データ分析が個々の社員に浸透|作業服・関連用品の専門店
現場作業服を中心に関連用品を扱う同企業では、全社員に対して研修を行い、表計算ソフトのExcelによるデータ分析ができる環境を提供しました。
ほぼすべての社員がデータへの理解を深めた結果、実務においてもデータ分析を重視する姿勢が浸透しています。現場にいる一人ひとりがデータを根拠とする提案、施策の実施を行うことで、企業全体としての未来予測の力や新たなビジネスチャンスの獲得へとつながっています。
自社事業へ実りをもたらすデータ活用を目指そう
日々蓄積する多種多様なデータは、利益創出につながる重要な資産です。しかしデータを集め、眺めているだけでは何も生み出せません。自社にとって確実な成果となるデータ活用の道筋を見出し、具体的な方策に着手する必要があります。
一方でデータ活用の必要性を知りながらも、課題を抱える企業も多く見られます。特に、データ収集やデータ品質の段階で課題がある企業では、データ活用までの道のりが長くなるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、NTTタウンページのタウンページデータベースです。データの鮮度が高く、豊富な企業リストを提供しているタウンページデータベースを活用することで、データ活用の促進、さらに事業成果につながる取り組みが可能となります。データ活用にお悩みの際には、ぜひご活用ください。
2024年3月執筆
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