こちらの記事では、観光マーケティングの事例として、主に人流データを活用した交通課題解決についてご紹介します。観光マーケティングにおける交通整備の重要性をはじめ、その効果として、観光客誘致や周遊促進、都市の渋滞解消などに正しく繋げるために、人流データを活用してどのような調査・分析を実施するのか、人流データを導入することのメリットも含めて、スマートフォンの位置情報を活用した人流データによる調査・分析の事例を中心にご紹介します。
1.観光マーケティングにおける交通の役割
(1)観光マーケティングにおける交通整備の重要性
観光マーケティングにおける交通整備は、地域の観光構造や観光客の行動特性に大きな影響を及ぼします。観光マーケティングにおいては、特に二次交通の整備が、観光客誘致を目的とした観光施策を展開する上で、重要な要素となっています。二次交通とは、拠点となる空港や鉄道の駅から観光地までの交通手段のことです。公共交通機関が網羅されている都心部を除き、地方では、移動をする際の交通手段が少ないこともあり、観光施策を展開しても、アクセス環境が原因となり、観光地の魅力を充分に伝えることができないケースがあります。観光マーケティングにおいては、二次交通の整備が、観光客の利便性向上、観光地の知名度やイメージアップの土台となります。
(2)交通課題解決による観光客誘致・周遊促進
交通課題を解決することで観光客誘致や周遊促進に繋がります。例えば、鉄道や飛行機を利用して目的地の観光スポットに行く場合、最寄りのターミナル・拠点からその先の交通手段が必要となりますが、シェアサイクルや周遊バスを取り入れることにより、小回りの利く移動手段が確保され、渋滞の解消や交通手段に対する観光客の満足度向上に大いに役立ちます。
ただ、これらの効果を最大限に発揮するためには、地域の観光地の特色や季節・時間帯など、その時々の観光客の流入状況に合わせて適切な手法を検討する必要があります。
そのためには、人流データの収集・分析など、客観的データに基づいた施策展開が非常に有効と言えます。ここでは、NTTタウンページで行った、人流データを活用した調査・分析による交通課題解決と観光客誘致や周遊促進の事例をご紹介します。
2.交通課題解決に向けた人流データの活用事例
(1)人流データによるシェアサイクルポート適正化分析事例
交通課題解決に向けた自治体の観光マーケティングの事例として、観光客誘致や周遊促進などを目的に、自治体が保有する既存のシェアサイクルデータと、人流データやタウンページデータベース(施設情報)、駅乗降データなど、さまざまなデータを掛け合わせた分析による、シェアサイクルポートの最適配備の検討における活用が挙げられます。
人流データは解像度の高いスマートフォンの位置情報データ(GPSデータ)を活用し、人流の混雑度やOD(Origin:出発地/Destination:目的地)、時間帯別流入出を可視化することで、シェアサイクル利用数と人流の相関を詳細に調査しました。
結果、従来のシェアサイクルデータだけでは見えなかった、客観的・定量的観点に基づいたシェアサイクルポートの新たな設置候補エリアの発見に繋がりました。また、分析結果を踏まえた実証実験により、実際にシェアサイクル利用者が増加し、自治体が設定していた目標利用者数も上回ったことが実証されたため、本格導入への移行を予定しています。さらに、今後シェアサイクル利用数と人流データの検証を継続的に実施し、効果測定と改善を繰り返すことで、刻々と変化する観光課題への迅速な対応も期待できます。
(2)交通課題解決に向けた人流データ活用のメリット
自治体の観光マーケティングにおいて、交通課題を解決するために、人流データを活用することのメリットをご紹介します。上記のシェアサイクルポートの最適配備における事例で考えた場合、当初、自治体においてはシェアサイクルの利用状況等を分析する際に、シェアサイクルデータのみを活用しておりました。観光マーケティングにおいても、限られた範囲での施策検討に留まっていました。
このような状況においては、シェアサイクルデータに人流データの位置情報を掛け合わせ、比較することで、シェアサイクル事業の現状が明らかになり、今まで見えてこなかった仮説の検討に繋がります。その上で、検討した仮説に基づきシェアサイクル事業の改善を図るためには、観光マーケティングにおいてどのような施策を展開していく必要があるか、自治体独自の取り組みとして掘り下げることもできます。
このように、人流データを活用することはより詳細の交通課題が把握でき、インフラ整備の有効な検討材料として大いに役立つといえます。
3. 観光マーケティングにおけるビッグデータの活用
(1)人流データ×各種データ
観光マーケティングにおいては、人流データに加えて各種データを掛け合わせた分析を実施することで、より多角的な視点で施策展開までのシナリオを検討することが可能となります。事例として、アンケートデータの活用により、シェアサイクルの利用者と非利用者の意見を取り入れることで、行動履歴のような客観的な観点だけではなく、住民や観光客の”気持ち”といった主観的評価も可視化することができ、より効果的な周遊施策を実現することができます。他にも、シェアサイクル利用中の自転車の走行軌跡に関する走行データなど、複数データを掛け合わせることで、周遊の傾向や消費者のニーズがより一層明らかとなり、精度の高い観光マーケティングに繋げることができます。
(2)交通課題解決における人流データの展望
人流データの活用は、観光マーケティングを推進する上で、今後ますます重要な役割を果たすと考えられています。社会のDX化が進み、交通分野においても、人流データを活用したエビデンスに基づいた政策決定により、課題解決に向けて施策の効果を高める動きが求められています。さらに、人流データと各種ビッグデータを掛け合わせることで、より深い洞察を得ることが可能となります。例えば、交通課題解決の事例では、天候による観光客の周遊パターンの変化を分析することで、悪天候時の交通対策や公共交通の運行計画に役立てることができます。また、人流データと地図情報や地形データを掛け合わせることで、観光客の特定の地点での人の動きや周遊の際の交通のボトルネックを可視化することも可能です。これらに加え、今後AI技術の発展により、解析能力・処理速度が向上し、膨大な量のデータ分析が身近となることで、観光マーケティングにおける交通課題解決に向けた人流データの活用も、多方面の展開が期待できます。
まとめ
以上、こちらの記事では、人流データを活用した交通課題解決のための観光マーケティングの事例についてご紹介しました。人流データを中心に、各種ビッグデータを有効活用することで、スマートシティの実現に繋がります。そして、交通信号の最適化や公共交通機関の効率化、歩行者の動線分析など、都市全体の交通システムを統合的に管理することが可能となり、観光客誘致や周遊の促進に大いに役立ちます。
NTTタウンページでは交通課題解決に向けた幅広いサポート体制を整えています。観光マーケティングにお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
業種:自治体 導入サービス名:人流DXソリューション 導入時期:2024年2月
2024年10月執筆
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