人流データとは「人々がどのような動きをしているかを可視化した数値」です。人の密度が多い場所や時系列での人数の増減を把握することで、顧客のニーズ分析や新たなビジネスモデルの構築におおいに役立ちます。そのため、マーケティングの分野をはじめ交通や観光、都市開発などで活用されています。
昨今のデジタル技術の進化やスマートフォンの普及、AIの発展で、さらに精緻でタイムリーなデータの取得ができるようになり、活用の可能性を広げつつあります。
活用の有効性を認識している一方で、いざ自社のビジネスに取り入れようと思っても、データの取得方法や効果的な活用の仕方が分からないという人も少なくないでしょう。本記事では、人流データの活用メリットや取得の方法、活用事例を解説します。
人流データを活用したエリアマーケティングについては、従来のプロモーションの種類や課題を整理し、活用してできることや活用事例をまとめたE-bookをご用意しております。
人流データを活用したエリアマーケティングが分かるE-bookを無料ダウンロード
※会社名、メールアドレス、ご担当者名など全5項目の入力でダウンロードが可能です。
人流データを活用する3つのメリット
この章では、人流データをビジネスに取り入れることで得られるメリットを3つ紹介します
3つの活用メリット
▼3つの活用メリット
- 高精度な情報がリアルタイムで手に入る
- データ集計のコストパフォーマンスが高い
- データの蓄積・比較ができる
高精度な情報がリアルタイムで手に入る
人流データを活用すると、誰がいつどこでどのようなことを行っているかなど、高精度な情報をリアルタイムで手に入れることができます。これにより、例えば特定エリアの混雑時間の予想や、その場所に最も集まる年齢層の把握などが可能となります。
データ集計のコストパフォーマンスが高い
昨今の技術の発達により、人流データを活用すれば大量のデータが低コストで効率よく手に入るようになりました。従来のデータ収集の手法は現地調査に出向く必要があり、コストがかかっていましたが、人流データを活用すればそのようなコストもカットできます。
一度システムを構築すれば継続的なデータ収集が可能となり、長期的なコストパフォーマンスが高い点も魅力的です。データ収集自体にかけられるコストもないという場合は、国土交通省や総務省が公開している無料のオープンデータを活用することで、人流データを活用することも可能です。
データの蓄積・比較ができる
人流データは取得するたびに蓄積されていきます。それにより過去のデータと最新のデータとの比較がしやすい点がメリットと言えるでしょう。
データが蓄積されれば、ターゲットとしている商圏や顧客の行動パターンが把握でき、行動変容に対応した戦略を立てやすくなります。また、地理情報やほかの統計情報と人流データを組み合わせて比較すれば、さらに分析の幅を広げることも可能です。
人流データの活用で解決できる課題
人流データの活用は、ビジネスにおける課題の解決にも役立ちます。マーケティングを実施する中でぶつかりがちな4つの課題に対して、人流データがどのように活用できるのかを紹介します。
▼解決できる4つの課題
- 顧客の動向が分からない
- 自社・自店舗の商圏が把握できていない
- 競合の動向が分からない
- 潜在顧客へアプローチできない
顧客の動向が分からない
既存顧客の動向がつかめないことで効果的な戦略の実施が難しく、集客が見込めなかったり、顧客の損失につながってしまうという課題を解決します。
リアルタイム情報の取得ができる人流データの強みを生かすことで、現状の顧客動向が把握でき、ニーズに沿った商品展開やサービス提供、プロモーションが可能になります。
例えば、顧客がいつ多く訪れていて、売れ行きの良いものが何かを把握できていれば、その時間によく購入される製品のセールを実施するといった戦略を取れるでしょう。
自社・自店舗の商圏が把握できていない
既存顧客の動向がつかめないことで効果的な戦略の実施が難しく、集客が見込めなかったり、顧客の損失につながってしまうという課題を解決します。
人流データを活用すると、来店してくれた顧客の動向と競合他社のデータを踏まえた分析により、自社・自店舗のターゲット層やエリアはどこなのかが見えてくるでしょう。また顧客が多いエリアを知ることができ、新たなビジネス展開や施策見直しに役立ちます。
例えば、人流データを活用して自社や競合の商圏を分析することで新店舗の出店先を検討する場合、売上につながりやすい場所に店舗を構えることが可能になります。
競合の動向が分からない
競合の動向が分からず、差別化戦略を打てずに、顧客を競合に取られてしまうことで、市場シェアの低下を招いているという課題を解決します。
人流データを用いれば、同じ商圏やエリア、業界内での競争状況や各店舗の位置づけを具体的に示すことができ、他社・他店舗との差別化を図る案を検討しやすくなります。
人流データによって取得した競合の動向を分析すると、競合が取っている戦略の分析が可能です。そうすることで、自社が競合と差別化するための方向性も見えてきます。
潜在顧客へアプローチできない
潜在顧客へ効果的なアプローチができない状態が続き、売上の停滞や減少、市場での競争力の低下を引き起こしているという課題を解決します。
人流データを分析することで、最適なプロモーションのタイミングや露出するべきエリアの選択につながり、結果的により多くの潜在顧客へアプローチが可能となります。人流データは、顧客の行動をパターン化でき、潜在顧客と既存顧客の共通点・相違点を洗い出せるためです。
共通点・相違点といった情報は、それぞれの顧客層への適切なアプローチ方法を検討する材料の一つであり、潜在顧客と既存顧客の両方に同じ施策が効果的なのか、もしくはほかの施策を取るべきなのかを明確化します。
具体例として、潜在顧客は既存顧客と近い場所に住んでおり、年代もほぼ同じであるがなぜ来店してくれないかを相違点をもとに検討することで、潜在層に関心をもってもらえるようなキャンペーンの実施が検討できます。そうすれば潜在顧客にも来店してもらえるようになるでしょう。
人流データを取得する5つの方法
実際に人流データを活用したくても、どのような方法でデータを取得すれば良いか分からないという人も多いのではないでしょうか。ここでは、主な取得方法を5つ紹介します。それぞれの特徴を理解し、自社に合った取得方法を選びましょう。
▼取得方法5選
- GPS機能
- 施設や店舗のwi-fi
- ビーコン
- 通信基地局
- カメラ
GPS機能
スマートフォンのGPS機能により獲得した位置情報から、人流データは取得できます。GPSとは、人工衛生から送信される電波をスマートフォンが受信することで、位置情報を獲得する機能のこと。スマートフォンの普及により、GPS機能を使って多くの人流データを取得できるようになりました。細かい位置情報まで特定可能であるため、より詳細に分析したい場合におすすめです。
GPS機能は、ナビゲーションアプリやSNSアプリ、ゲームアプリなどに搭載されています。これらのアプリを利用したユーザーから位置情報を取得し、人流データとして使用されています。
施設や店舗のwi-fi
街中にあるさまざまなwi-fiアクセススポットへの接続情報からも、人流データは取得できます。ユーザーがwi-fiに接続することで、どこのエリアでどれくらい滞在しているかがデータとして手に入ります。またwi-fi利用のために登録した性別や年齢などの情報も人流データとして活用することができます。
昨今の外国人観光客増加により、外国人向けに提供するwi-fiサービスも増えました。それらのサービスを利用すれば、来日外国人に限定した人流解析が可能です。インバウンド施策や外国人向けのサービス提供を検討している企業におすすめの取得方法です。
ビーコン
少ない電力で利用可能な近距離型の無線技術であるビーコン(Bluetooth Low Energy)を使い、人流データを取得する方法です。
ビーコンとは半径10mの範囲内で信号を発信できる発信機のこと。商業施設などの店舗に設置されていることが多く、スマートフォンに特定のアプリをインストールしているユーザーが近づいた際に、ビーコンと通信することで位置情報を取得する仕組みです。
屋内や地下にいる人の位置情報を取得できるという大きなメリットがあり、施設内での行動や動向を追跡・分析するのに役立ちます。商業施設内の店舗のビジネス戦略を検討する場合におすすめです。
通信基地局
携帯電話の基地局とスマートフォンの更新履歴をもとに獲得した位置情報から、人流データを取得する方法です。
基地局は全国にあり、取得できる位置情報が広範囲に渡るため、インフラや大規模商業エリアの整備、都市開発向けの人流データを取得したい場合におすすめです。スマートフォンのGPS機能がオフの場合や、機能が備わっていない携帯電話の場合でも位置情報を得られるというメリットがあります。
一方、GPSと比べるとデータの精度が劣り、小規模のエリアを詳細に分析するのには不向きだという点に注意しましょう。
カメラ
街中に設置されたあらゆる監視カメラの映像を解析することで、人流データを取得できます。この方法では、街を往来する人の属性、人数カウントといった人流データが取得でき、観光地や商業施設の活性化へのデータ活用を目的としている場合に有効です。
カメラ映像による解析は、スマートフォンを持たない場合もデータの取得が可能である点が大きな特長。ただし、カメラを設置した後のデータしか取得できず、過去のデータの蓄積がない点がデメリットです。
人流データの活用で成果が得られた施策例
人流データを活用して成果が得られた施策例を2つ紹介します。
【例1】新規出店のエリア選定に活用
新規出店における人流データの活用事例です。小売店の出店エリア選定と、店舗運営の効率化推進のために人流データを活用した例です。
▼人流データ活用による効果
- リアルタイムかつ正確な位置情報をもとにターゲットの動きを把握でき、出店場所の検討と決定を効率的かつ的確に行える。
- 従来はエリアごとの人口密度の分析や、交通量のカウントなどの現地調査が必要で非効率だったが、人流データの活用により時間的コストが削減できる。
- 過去の実績から判断するのではなく、現時点の人の動きから判断できるため、より的確な発注や人員配置ができるようになる。
新たにビジネスを始める場合や、マーケティング施策を見直す場合、成功の鍵を握るのは商圏や顧客ニーズの正確な把握です。人流データはビジネスの方向性を決める材料集めとして有効なツールと言えるでしょう。
【例2】ポスティングの配布エリア選定に活用
自社の広告や自店舗のチラシのポスティングを行う際に人流データを活用した事例です。既存顧客のデータをもとにビジネスのターゲットとなるエリアを洗い出すために人流データを取り入れました。
▼人流データ活用による効果
- ポスティングを行う前にターゲットエリアを絞り込むことで重点的にプロモーションを行うことができ、マーケティング効果が最大限に発揮される。
- 既存顧客の住居エリアを予測し該当エリアへ重点的に配布することで、そのエリアに居住する新規顧客の獲得可能性も高めることができる。
こちらの事例は、エリアごと手当たり次第にプロモーションを行っていたが効果や集客が見込めず、売上の停滞を招くという課題を抱えていた店舗が、人流データを活用することで、最適な手法の洗い出しができ、売上向上への道筋を作ることにつながった例です。効率的なマーケティングにも人流データは役立つと言えるでしょう。
まとめ
人流データは、リアルタイムで正確な情報を取得が可能であり、そのデータの分析をすると顧客ニーズや市場の動向の把握が可能です。ビジネスの戦略立てに悩む場合や顧客へのアプローチに苦戦する場合に、有効なヒントをくれるツールとして、活用を検討してみてはいかがでしょうか。
今回解説した具体的な取得方法や活用事例を参考に、自社に適した人流データの活用を行うことで、ビジネスモデルの最適化が図れ、より効果的なマーケティングを推進することができるでしょう。
NTTタウンページのタウンページデータベースでは、人流データと施設情報を活用した「人流DXソリューション」をご提案しております。
過去30年間の統計情報、約580万件の施設データ、140種以上の提携スマートフォンアプリ(2023年3月末現在)をもとに、精度が高い人流データと施設情報を構築。これらを活かして広告の適切なターゲットの設定をサポートし、見込み客に対して効率的に広告を配信。来店計測も行えるため効果測定も容易で、PDCAサイクルを回すことができます。
「広告を出しているけどなかなか効果が現れない」「ターゲティングの重要性は理解しているけれど、どう設定してよいかわからない」といったお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
2023年12月執筆
データベースにご関心やお悩みがございましたら、
ぜひお気軽にお問い合わせください。