こちらの記事では、エリアマーケティングの事例として、地域評価指標を活用したまちづくりについてご紹介します。社会全体のDX化が進む中で、まちづくり分野においても、積極的なデータの利活用が求められており、地域評価指標の活用需要も年々高まっています。ここでは、エリアマーケティングにおける地域評価指標の有用性をはじめ、地域評価指標や人流データの位置情報を掛け合わせた調査・分析と、これらに基づくまちづくりの事例を中心にご紹介します。
1. エリアマーケティングにおける地域評価指標
(1)地域評価指標について
地域評価指標とは、全国の店舗・施設の位置情報を網羅しているタウンページデータベースとさまざまな都市データを掛け合わせ、暮らしやすさの観点から、特定のエリアや不動産の周辺に、生活する上で一般的に近くにあって便利で暮らしの満足度が向上する要素である「スーパー」や「飲食店」、「コンビニ」、「カフェ」などの都市のアメニティがどれくらい集積しているかを評価するサービスです。地域評価指標の活用により、特定のエリアや不動産と生活圏内でアクセス可能な店舗・施設の位置情報を紐づけ、店舗・施設ジャンルごとの周辺立地数をもとにその充実度を数値で客観的に可視化することができます。
(2)エリアマーケティングにおける地域評価指標の有用性
エリアマーケティングにおいて、地域評価指標の活用は非常に有効です。例えば、GISシステムとの掛け合わせにより、ヒートマップやレーダーチャートで店舗・施設が業種ごとにどのように点在しているのかを表示させることで、エリアごとの特徴を地図上で視覚的に分かりやすく可視化・比較することに役立ちます。さらに、「ファミリー」や「高齢者」、「オフィス」など、ターゲットとする属性により、生活する上で重要な店舗・施設のジャンルは異なるため、活用するアメニティの業種・種類を柔軟に入れ替えて分析することも有効な手法です。地域評価指標を活用した緻密なエリアマーケティングにより、エリアや属性ごとに最適化した戦略を取ることができれば、成果の最大化に繋がります。
2.まちづくりにおける地域評価指標の活用事例
(1)ウォーカブルなまちづくりの展開
エリアマーケティングにおいても、ウォーカブルなまちづくりが求められています。具体的には、道路や公園、広場などの公共空間の整備や建物の路面階と歩道の一体的な利用など、誰もが安心して居心地よく歩きたくなるまちづくりです。都市の魅力を向上させ、まちのにぎわいを創出することを目的に国土交通省も推進している考え方※です。そして、人々がまちなかに集うには、むやみやたらにまちづくりを進めるのではなく、生活する上で重要なアメニティを検討し整備することが非常に重要となります。地域評価指標は、成功している都市をベンチマークとして、店舗・施設の位置情報とさまざまな都市データを掛け合わせ、分析・比較し、これからめざすべきまちづくりの方向性を決めることに大いに役立ちます。
※参照:国土交通省ウォーカブルポータルサイト https://www.mlit.go.jp/toshi/walkable/
(2)まちづくりにおける地域評価指標の需要の高まり
さらに、エリアマーケティングにおけるまちづくりを推進する上で、地域評価指標の活用需要が年々高まっています。ひとつの事例では、道路や公園、広場などを整備するにあたり、地権者との合意形成や整備後の効果を定量的に把握したり、各ステークホルダーに示していくための評価体系の構築が求められています。その背景として、都心部においては、再開発が中心となっており、関係するステークホルダーの数も増加する中で、エビデンスに基づいた意思決定が必要となっています。まちづくりによる周辺環境の変化を測る指標として、タウンページデータベースの店舗・施設の位置情報をまちづくりの前後で比較することで、意味のある施設集積が実現しているか、データに基づいた効果測定が可能となり、今後の効率的なまちづくりの推進に繋がります。
(3)まちづくりにおける時系列分析の事例
実際にまちづくりの基礎データとして地域評価指標を活用したエリアマーケティングの事例をご紹介します。地域評価指標では、一街区単位で点数の算出が可能であり、詳細な場所による差異を表現することができます。このピンポイント分析により、エリアマーケティングにおいて、まちづくりの前後で、該当エリア周辺を隈なく時系列で比較することで、まちづくりの結果として、近くに飲食店やスーパーなどの人々の生活を豊かにする店舗・施設が増えたかどうか、また、どの範囲までその影響を及ぼしたのかといったことを可視化し、評価にお役立ていただきました。その後も、地域評価指標を基礎データとして、まちづくりにおける目標値を設定し、実施すべき計画の決定、評価にご活用いただいています。
3.エリアマーケティングにおけるまちづくりの高度化
(1)地域評価指標×人流データの活用事例
エリアマーケティングにおける地域評価指標と人流データを活用したまちづくりの事例をご紹介します。人流データの位置情報を掛け合わせることで、地域評価指標で得られた街のペルソナに加えて、人のペルソナまで把握することができます。エリアごとに店舗・施設の集積の特徴を把握し、また、住民・来訪者の興味関心や趣味嗜好が分かれば、従来のノウハウでは捉えきれていなかった需要と供給のギャップを可視化し、現況を踏まえたまちづくりの方向性の決定、施策展開に大いに役立ちます。当社では、地域評価指標と併せた人流データの調査・分析やペルソナ提供のサービスも併せて、エリアマーケティングにおけるまちづくりを支援しています。
(2)まちづくりにおける地域評価指標の展望
まちづくりにおいては、エリアの特徴の把握や他エリアとの比較や、ターゲットの選定について客観的に分析をし、施策に落とし込むことが重要です。地域評価指標を活用することで、エリアの状況を分かりやすく可視化し、蓄積されたデータから将来予測まで可能となります。今後はますます人々のライフスタイルの多様化が進み、現況や未来を的確に捉えたまちづくりが重要となってきます。また、複雑化した都市課題の解決のためには、官民のデータ連携も重要となってきます。しかし、新型コロナ蔓延の際に、デジタル面でさまざまな課題が浮き彫りとなったように、自治体では依然としてデータ利活用が課題となっています。官民連携の観点からも、地域評価指標の活用は、まちづくり分野において、今後期待される役割が高まることが予想されます。
まとめ
以上、こちらの記事では、エリアマーケティングの事例として、地域評価指標を活用したまちづくりについてご紹介しました。地域評価指標は、まちづくりの分野における、まちのエリア特性の比較やウォーカビリティ指標としての活用に最適です。当社では、アライアンス会社との連携を強化し、地域評価指標への各種ビッグデータの応用も積極的に検討・推進しております。また、地域評価指標は、エリアマーケティングにおいて、その他の分野でも、物件探しや不動産戦略・調査研究などにご活用いただけます。自治体や民間企業さまへご提供の実績・事例がありますので、エリアマーケティングにお悩みの際はお気軽にお問い合わせください。
2024年10月執筆
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